2010年08月01日

フランス危機一髪! '07 <第六章>

*************************

 

   第六章  悪夢、再び…Toulouse-Paris 

 

*************************

 

快晴の空のもと、Carcassonne駅からTGVは滑り出した。

今回初めて乗ったTEOZ(新車両?)の椅子は

とっても座り心地がよく、これならParisまで車窓を楽しむのも

悪くないのにな〜、と電車好きの銘子は思った。

 

 

tkg'07-20.jpg

 

 

 

そしてつい、♪世界の車窓から♪ を口ずさみながら

写真を撮ってみたりするのだった。

 

 

tkg'07-21.jpg

 

 

 

そんなことをしていたらあっという間に列車は

Toulouse Matabiau駅に到着した。

 

午前11時16分。

 

ともかく、空港バスが出ている場所を尋ねると

駅のすぐそばのバスターミナルから出ているとのこと。

運行スケジュールなどを確認してから駅構内に戻り、

地下鉄で中心街へ向かった。



tkg'07-22.jpg


大阪ニュートラムや神戸ポートライナーと同じ仕様で、

ホームのドアと列車のドアの二重扉になっている。

まずは“キャピトル広場”を目指す。

ここにツーリストインフォメーション(観光案内所)が

あるはずだ。

 

ここでざっと主要な観光ポイントを地図に記してもらって散策だ!

と、思ったらおなかが空いて来た。

そういえばお昼ではないか。

 

銘子はガイドブックに載っていた、

Brasserie FLO Les Beaux Arts に行くことにした。

 

もともと歴史あるレストランだったらしいのだが、

今はFLOグループのチェーンになっているようだ。

レトロな内装の中、お手軽メニューがあるようなので、

その選択をした。

 

広場を南下し、大通りに出たところで西に進むと

すぐに Garonne川にぶつかる。

このPont Neuf (Toulouse 最古の橋)のたもとにその店はある。




tkg'07-23.jpg

 

通されてメニューを見る。

隣のおじさんたちのボリュームある皿を見ていたら、

どうしても前菜とメインの両方を食べきる自信がなかった

銘子は変則的ではあるが、前菜だけを頼むことにした。


 
 


tkg'07-24.jpg


写真で見ると、どう見てもデザートに見えるだろうが、

いやいや、これが。

 

甘くないパイ生地の上に、タルトタタンのように煮たリンゴ

(甘くない)が載り、その上にもちろん甘くない

『フォアグラのアイスクリーム』が載っているのだ。

 

飾りはあさつき。

ソースはチョコレートではなく、バルサミコソース。

 

絶妙のバランスとハーモニー。

 

銘子は大満足で 1/4 Pichet(250ml入りのキャラフ)の

赤ワインをじっくり楽しんだ。

 

店側からしたら、儲からない客だ。

すんません。

 

申し訳ないので(?)いえいえ、

まだおなかに余裕があったので

久しぶりにデザートを頼んでみた。

 

ボリュームのあるものは無理なので、やはりここは

Crème Brûlée(クレーム・ブリュレ)にした。

 

これなら完食できる。

 

それでもやはり多い。直径20cm、深さ1.5cmは確実にある。

 

 

tkg'07-25.jpg

 

 

 

エスプレッソもいただき、ゆっくり食事をして店を出たら

すでに午後2時を回っていた。

何だか風が出ていた。

 

雲行きがおかしい。

 

しばらく歩くとポツポツ雨が降って来た。

バッグに入れてあった折りたたみの傘をさそうとすると、

なぜか骨が折れていた。

縁起でもない。どうして折り畳んだ状態で骨が折れるんだ?

 

雨が降ったり止んだりするなか、暗い空の風景を撮りたいと

思わなかったのでそのまま銘子は地下鉄に乗り、

空港バスの乗り場へ向かった。

 

雨が本降りになっていた。

15時ちょうどのは出てしまっていて、

次の15:20発のバスに乗り込んだ。

空港までは30分だそうだ。

料金は4ユーロ(680円しない)。

タクシーに乗るよりはずいぶん安い。

 

銘子の乗る便は AF6135 で、Toulouse17:15 発だ。

空港には15:50頃に到着した。ちょうどいい時間。

すぐに2階のチェックインカウンターへ向かう。

 

あれ?どうしてこんなに人でごった返しているんだろう?

どうしてこんなにむやみに列があるんだろう?

 

銘子の脳裏に2日前の悪夢がよぎった。

 

「まさか…!」

 

まだ航空会社のストの混乱は続いていたのであった。

とりあえず、列の最後尾の人に尋ねて

そこがパリ行きの列であると確認した。

しばらく銘子はそこに並んでいた。

 

「飛んでいる便に変更してもらったんだし。大丈夫!」

そう自分に云い聞かせながら。

 

しかし…猛烈な焦燥感。

 

最前列はどうなっているんだろう?

そこからは見えない。

 

前にも述べたが、一人旅のときのこういった場合、

誰にも「ちょっと様子見て来るわ!」と

荷物は頼めない(荷物の所有権を放棄するなら別だが)。

そうかといって、列を荷物ごと離れたら最後、

また最後尾につかなくてはならない。

 

そのとき、なぜか銘子はそのまま列に並んでいては

いけない気がした。

 

「ええい!また並び直してもいいや!」

 

やはり、列の最前列はカウンターにつながっていなかった。

ロビーの真ん中に張られたロープがあるだけだった。

 

酸っぱいものが銘子の喉に込み上げて来た。

焦りながらチェックインカウンターを見回すと、

一番左のカウンターに人がいた。

誰かが交渉している。

 

「ここだ!」

 

銘子はその人の真後ろで自分の順番を待った。

また酸っぱいものが込み上げて来る。いかん、いかん。

吐いている場合ではない。

 

自分の番になった。とりあえず、こう聞いてみる。

 

「あの…私の飛行機の予約番号はこれなんですが、

 どのカウンターでチェックイン手続きすれば

 いいですか?」

 

昔の人形劇・サンダーバードの次男に似ているお兄さんが

無表情でコンピューターのキーボードを叩いてすぐに云った。

 

「その便は欠航です」

 

銘子の血の気が引いた。

 

「これは変更した便です!これは飛んでいるということで

 変更したんです!

 なぜ?どういうこと?私は今夜、パリに行きたいの!

 着かなくてはいけないの!

 どうすればいいのぉ〜っ????!!!!!! 」

 

考えるよりも早く、すらすらと叫んでしまった。

たぶん、文法も単語も動詞の活用もおかしかったと思うが、

通じたようだ。

何てったって、勢いが違う。

 

「15:55発の便にもしかしたら席があるかもしれません。

 しかし、今、乗客リストを作っている最中です。

 そこで待っていてください」

 

彼が視線で示した壁際に行くしかなかった。

銘子の後ろに控えていた次の客が

すぐにサンダーバードに覆いかぶさるように話しだした。

 

すでに16時は回っているのに、15:55発の便???

 

どういうこと?

 

自分の聞き間違いか?

しかし、ここで待つように云われたのだから待つしかない。

また酸っぱいものが込み上げて来た。

 

銘子の乗るはずだったTGVはToulouseを13:14に出て、

Parisには19:05に到着するものだった。

もし、もしもあのままTGVに乗っていたら今頃は…

いや、そんな“たら・れば”の話を思っても仕方ない。

 

今から雨の渋滞の中、タクシーを飛ばして駅に向かっても

17時を回る。

そこですぐに発車するTGVがあるかどうか?

なかったら?

満席だったら?

駅で夜明かしをするか、この空港内で朝を迎えるか?

 

究極の選択をしながら辺りを見回して銘子は決めた。

もし、サンダーバードがどうにもしてくれなくても、

空港内にいる方が安全に思えた。駅で寝るよりはマシ!

 

後で考えれば、そこまで悲壮な決意をしなくても、

翌朝の便に変更して、またToulouse 市内のホテルを

とればいいものだが、そのときの銘子には

全くと云って余裕がなかった。

 

ふと気がつくと、先ほどの後ろに並んでいた客が

『つい立て』のごとく、銘子の真ん前に立った。

これではサンダーバードから私が見えなくなってしまう!

 

銘子は否が応でもサンダーバードの視界に入る場所に移って、

必死のアイコンタクトを取るのであった。

 

銘子の熱視線で焦げたのか、サンダーバードが呼んだ。

 

「フライグブルーカードを…」

 

間髪を入れずにカードをカウンターに出す。

 

彼は全く無表情で会員ナンバーを打ち込む。

 

「では、もうしばらくそちらでお待ちください」

 

銘子は涙目で頷いた。

涙でかすんだ目で見上げると

そこには“WaitingList”と標示が出ていた。

 

よく分かっていない銘子だが、

あのまま列に並んだままだったら、埒があかないというか、

どうしようもないことになっていた、

ということだけは分かった。

 

サンダーバードに唾がかかる勢いでイタリアか

スペイン人のおねえさんが文句を云っている。

その後ろに暗い目をしてアフリカ人が3人で

仰天するほどの荷物を持って並んでいる。

段ボール箱にゆる〜く紐をかけただけのものだが、

箱の大きさが半端ではない。そしてそれが

3個、4個、いや、5個。あんなん持って

飛行機って乗れるのか?

 

いやいや、そんな人の心配している場合ではない。

 

銘子の後で銘子と同じようなやり取りをしていた

オネエサンが「そこで待つように」と隣に来た。

 

軽く鼻歌を歌っている。次のオネエサンもそばに来た。

すんごい冷静だ。

銘子と違って、焦っている雰囲気が全くない。

 

気になるので、そのオネエサン達に聞いてみた。

 

「私たち、パリに到着出来るんでしょうかねぇ?」

 

オネエサンは軽く、

「行けるんじゃない?」と云って、また鼻歌を歌いだした。

 

銘子は今、“ものすごく大丈夫”な状態なのか?

確実に乗れるのか?

 

いや、楽観視は出来ない。チケットをもらうまでは。

いや、チェックインをするまでは。

いや、飛行機に乗るまでは。

いや、その飛行機が飛ぶまでは!

い〜や!その飛行機がParisに無事に到着するまでは

誰も何も信じるもんか!!!

 

サンダーバードが顔を上げて銘子に呼びかけた。

 

「マダム !」

 

カウンターに飛んで行った。

チケットが渡される。15:55発のAF7787便のだ。

 

「あちらでチェックインしてください」

 

「ええっ!Parisに帰れるの?」

 

「はい」

 

サンダーバードは眉を動かさずに答える。

 

「ありがとう!ありがとうっつつ!!!」

 

タグをつけられた荷物が、ベルトコンベヤーに揺られて

向こうへ消えていった。

 

「搭乗口はあちらです、マダム」

 

「はい、ありがとうっ!」

 

搭乗手続きの荷物検査でベルトを外せと云われる。

ベルトでも何でも外すわ!帰れるのだったら!

 

搭乗がすでに始まっていた。

すぐに乗り込む。満席だった。

時計を見ると、16:50だった。

空港到着が16時前だったから

かれこれ1時間ほどの出来事だったのだが

銘子にはもっともっと重く長い時間だった。

 

機長のアナウンスが流れた。

 

「当機は18:30、Parisに到着します…」

 

「…ほぼ…予定通りにParisに帰れる…じゃない!!

 何?…いったい、何だったんだ?…この1時間はっ?!」

 

窓際で銘子は一枚写真を撮った。

どうも、目が潤んでいたのか、雨で窓が濡れていたのか、

“涙のToulouse Blagnac空港”とでも名付けようか。

 

 

tkg'07-26.jpg

 

 

Paris CDG空港には定刻通りに到着した。

すっかり土砂降りである。

タラップを降りて空港内へ向かうバスに乗り込むまでにかなり濡れる。

でも構わない。だって、もうここはParisなんだもん!

 

荷物も無事に出て来た。

まだこの時間だったらRERでも大丈夫(な時間帯)なのだが、

もう銘子は疲労困憊だった。

 

で、タクシー乗り場へ向かい、

行き先のホテルの名前&住所を告げて軽く目を閉じた。

 

雨のラッシュアワー。またもや渋滞に巻き込まれながら、

やっとホテルに到着した。

ここで我に返った銘子は、ホテルの3軒向こうの

中華総菜屋さんに寄って夕食代わりのビールを買うことを

忘れなかった。

 

 

tkg'07-27.jpg

 

 

 

預けておいたスーツケースを受け取り、部屋に入った。

 

「帰って来た…帰って来られた…うそじゃない…」

 

声に出して云ってみた。

ビールを一口飲んだ。うそじゃなかった。

 

スーツケースから充電済みの電池を装着し、

携帯からメールで無事に帰って来た旨を桐子と俊に伝えた。

 

俊に変更してもらった便が飛ばなかったことは、

彼らが知っているはずで…きっと心配していると思ったからだ。

 

行き違いにメイルを受信した。

 

このレンタル海外用携帯は

FOMAカードを入れ替えているので

普段使っているメイルアドレスに送られたメイルを

そのまま受信する。

もちろん受信料金は海外ということもあって高くなる。

 

だから選択して受信することも出来るのだが、

今回の渡仏を銘子はほとんどの友人に伝えていたので

特別な操作をしないでいた。

 

いったい、誰だろう???

 

送り主は何と…ノブリン(元カレ)だった。

(以前、メルアドを教えるはめになり、

 それからたまに携帯にメールが届くのだ。

 もちろんこちらから返事はしない)

 

『おはよー! 銘子、映画観に行けへんかー?

 メルアド、新しいこっちに変更しといてー』

 

「誰が行くかい!」

 

銘子は消去しながら、ビールをもう一口飲むのだった。

 

 

つづく

 

 

次回、

 

***************************

 

  第七章   Louvre(ルーブル美術館)デビュー! 

 

***************************

 

をお楽しみに!

 
 
 
posted by 小池 紫 at 15:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/39924359
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック