2010年08月07日

フランス危機一髪! '07 <第七章>

*******************************

 

 第七章   Paris散策と、Louvre(ルーブル美術館)デビュー! 

 

*******************************

 

10月30日の朝、銘子はホテルの部屋でゆっくり目覚めた。

それでも午前8時過ぎだ。

旅行中に目覚ましをかけなくても昼まで寝過ごすことはない。

 

身支度を整えてホテル近くの地下鉄Vavin(ヴァヴァン)駅前

にある老舗カフェに向かった。

 

一度だけでいいから豪華な朝ご飯というのを経験したかったのだ。

1927年の創業以来、コクトー、ダリ、ピカソ、サルトルが

出入りしていたという歴史的なカフェ、

La Coupole(ラ・クーポール)。

 

パリっと糊のきいたテーブルクロスのテーブルに通される。

メニューを見てぶっ飛んだ。え?朝ごはんに14ユーロ?

(当時のレートは1ユーロ=165円くらい)

 

でももう座ったことだし、ま、一度くらいはいいっか!

と銘子は注文した。

 

 

tkg'07-28.jpg

 

 

フレッシュジュースにパンが4種類。

中央の柱のそばに大きなパンのカゴがあり、

そこからパンを取って出してくれる。

バターはISIGNY(イズニー)だ!

ジャムもプラのパッケージではなくビン入り。

 

いや〜ん。食べ放題よっ!

…しかし、どう頑張っても銘子にはパンを二個、

コーヒーを二杯までが精一杯なのであった。

 

ふと見ると、フロア担当のおばさんが客が

席を立ったテーブルを整えている。

カゴに残ったパンはさっきの大きなパンカゴに

ポイポイ投げ入れる。

 

え?またそのパンを次の客に出すの?

ま、手を付けてはいないだろうけど…

昨日のパンじゃないだろうな?

銘子は少し興ざめした。

 

この日はパリ市内を散歩しながら母親に頼まれた手芸用品を

買いに回るのだ。

天気は上々。空がきれいだ。そこらの風景が美しい。

 

 

tkg'07-29.jpg

 

 

まずはSèvres-Babyloneまで歩いてLe Bon Marché

(パリ最古のデパート・1870年創業)でトイレ休憩。

ついでにここのモード館で少しチェックを入れる。

 

次にLes Halles(レ・アル)駅までプラプラ歩き、

St-Eustache教会近くのla droguerie(ドログリーという

日本にも展開している手芸店)を覗くが収穫はなし。

仕方なく、St-Eustache教会前の広場のオブジェ

(森永か明治のチョコレート菓子ぷっちょのCMで見たという

人もいるかも)を撮影。

たまに目の玉を落書きする輩がいるそうだ。

 

 

tkg'07-30.jpg

 

 

銘子は次の目的地であるSt Lazare(サン・ラザール)駅に行くが、

大型手芸店Mode&Travauxでも収穫はなかった。

意地になった銘子はそこからCadet駅まで歩き

小さな手芸店でやっと頼まれていた

バッグの持ち手買うことが出来た。

 

 

tkg'07-47.jpg

 

 

そろそろ痛くなって来た足を引きずりながら

またLe Bon Marchéまで戻って食品館で買い物をし、

ホテルに戻るといい加減おなかが空いてきた!

昼食を摂っていなかった銘子は少し早めの夕食を求めて

ホテル近くのOdessa Cafeに向かった。

 

注文して料理が来るのを待つ間、今日の散歩の途中で

買い求めたカードに姪っ子への便りを書いていると…

来た来た!美味しそうな鶏さんがっ!

 

 

tkg'07-32.jpg

 

 

思わずがっつき始める銘子。

しかし、写真を撮るのを忘れた!と気がついて

あわてて撮影するのだった。

(写真の肉が欠けている…)

 

すると斜め前の席のインド系の若いおにいさんが

何か云っている。

 

「え?」

「冷めるよ!」

「え?」

「早く食べないと冷めてしまうよ!」

「あ、ありがとう」

 

銘子は撮影を止めて食べ始めた。

カリッと焼けた皮にジューシーな肉。

カリカリポテトも美味しい。

あっという間に平らげてしまった。

気がつくとおにいさんはいつの間にかいなくなっていた。

 

食後の散歩がてらに近所の大型スーパー

Monoprix(モノプリ)をフラフラして

寝酒のビール2缶を買って帰る。

 

シャワーを浴びてビールを飲みながら

テレビを見ていたはずの銘子だが、

たくさん歩いたからか

あっという間に眠りに落ちてしまった。

 

10月31日。7時起床。

 

ホテル近くのEdgar-Quinet駅前の朝市を

冷やかした後、近所のパン屋さんの

イートインで安い朝食を摂る。

クロワッサン、プチデニッシュ、カフェオレで

4.3ユーロだった。

昨日とえらい違い!

やっぱり朝食はこのくらいの値段でないと!

銘子は確信するのであった。

 

 

tkg'07-33.jpg

 

 

たぶん常連客だろう相手にだけ、

焼きたてのクロワッサンを勧めている。

「いいなぁ…」 銘子のはもちろん冷たい。

ま、コーヒーが温かいからいいっか。

 

午前中はGaleries Lafayette(デパート)で

買い物をする予定である。

姪っ子たちへのパリ土産は洋服と決めている。

ここではすでにクリスマスの飾り付けが始まっていた。

 

 

tkg'07-34.jpg

 

 

これに点灯されているのを見たければ、

クリスマスの時期にここに来ないと無理だなあ…

数日後にはパリを発つ銘子はため息をつくしかない。

店内のクーポール(丸天井)に向かってそびえるツリー。

 

銘子は周りの視線も気にせず、床に這いつくばるようにして

写真を撮り続けるのだった。

 

 

tkg'07-35.jpg

 

 

やがて銘子は買い物を済ませて

荷物を置きに一旦ホテルに戻った。

いつも缶ビールを買う、持ち帰り中華屋さんの

イートインスペースで、昼食を摂ることにした。

ふと、ウィンドウのチャーハンに釘付けとなった。

ああ、米が食いたい。

 

吉本の往年の漫才コンビ、

こずえ&みどりのみどり姐さんに

そっくりのおばちゃんが

「このくらい?」 と盛ってくれたチャーハンに

「うう…もう少し多めに」と云いながら、

ついでに大好きなベトナム風揚げ春巻きも注文する。

あ、その野菜炒めも!

 

システムは簡単だ。

ショーケースに並ぶ総菜を適当に選んでチン!

してもらうのだ。

もちろん飲み物は1664(セーズ)!

 

 

tkg'07-36.jpg

 

 

あまりの大盛りにチャーハンが崩れてきた。

銘子好みの、ふうふうしないと食べられない程まで温めてくれた。

そして、それでも、やはり、上あごを火傷する銘子なのであった。

学習能力がないのか、熱いものでも、滅多にふうふうしない。

ただの馬鹿なのか。

 

隣のテーブルにいた4人の家族連れの子供が

興味津々でこちらを伺っている。

先の尖っていない中華風の箸を使って

米粒を食べている東洋人の女が珍しいらしい。

 

やはり食べにくい…

一瞬スプーンを使おうかと思ったが、子供の視線に

気付いた銘子は最後まで箸で食べることを決めた。

何でこんなとこで意地になるねん。

 

最後の一粒を食べきるところまで家族連れは…

いてはくれなかった。

ショーケースの向こうにみどり姐さん。テーブルに銘子。

二人きりになってしまった。

気詰まりなので姐さんに話しかける。

 

「マダム!おいしいですぅ!」

「あ、そう?ありがとう」

「ここ、5日程米を食べてなかったし…

 ほんと〜においしいです!」

「日本人や中国人はよくそう云うわ」

 

みどり姐さんは少しベトナム訛りの

コロコロと転がるようなフランス語なので

聞き取り辛いが、何とかそれからしばらく会話が成立した。

 

大満足で店を出て、銘子は

エッフェル塔と凱旋門に会いに行った。

 

前日に傷めた足の指が痛い。

子供の頃の怪我が元で、銘子の左足の薬指はいつも

中指に踏まれ続けている。

 

普段はどうってことはないのだが、

長く歩くと悲惨なことになる。

あ〜あ、テーピングしておくんだった。と思っても後の祭。

足を引きずるようにして銘子は

地下鉄の階段を下った。

 

エッフェル塔の足下にこの塔を建てたエッフェルさんの

銅像があるのを見たことがあるだろうか?

 

 

tkg'07-37.jpg

 

 

いつも塔ばかりを見ていて今回初めて気がついたのだった。

ひっそりとエッフェルさんの銅像は見つめている。

自分が作った塔に上ろうと

アホみたいに長い行列を作っている人々を。

 

 

tkg'07-38.jpg

 

 

日が傾いてきた。

急いで凱旋門に向かい、夜の撮影のポイントを探す。

さあ、日没までにモンパルナスタワーの展望台に行かなくちゃ!

 

 

tkg'07-39.jpg

 

 

まず、エレベータで56階へ。料金は9.5ユーロ。

 

ホールを一周したらありました。テラスへの入り口が。

 

 

tkg'07-42.jpg

 

 

ここから外に出てダイレクトに景色を楽しむのだ。

しかし、おのずとダイレクトに風を受ける。

晩秋のパリの59階の屋上って(パリでなくても)…寒い。

 

まずはミニ三脚を手すりに乗せてベストポイントにスタンバイ。

 

 

tkg'07-40.jpg

 

 

午後4時半過ぎの景色。

そこからぴたりとも動かずに数分ごとに写真を撮り続けること

2時間。エッフェル塔のてっぺんのサーチライトが回りだす。

 

「1、2、3、4、…」

 

ゆっくり23数えると一周するので、

シャッタースピードを考慮に入れてシャッターを押す。

 

 

tkg'07-41.jpg

 

 

さすがに2時間もいると歯が勝手にガチガチいうほど冷えてきた。

限界だ。手の指もかじかんでジンジンしてきた。

 

身体を温めるべく、タワーを降りてすぐに、

銘子は前日に行ったOdessa Cafeで

オニオングラタンスープを注文。

グラスワインももちろん一緒に。

 

 

tkg'07-43.jpg

 

 

10ユーロでしっかり温まって、銘子はまたカメラを片手に

エッフェル塔と凱旋門へと

写真を撮りに行くのであった。

…が、しかし、モンパルナスタワーでの撮影で

ほとんどの電池を使ってしまい、あっけなく撮影は終了。

 

またもや缶ビールを買ってホテルに戻るのであった。

 

さ、11月1日は朝からLouvre(ルーブル美術館)だっ!

 

入場券は9ユーロ。入ってすぐに売店で朝食を調達。

サンドイッチと水を購入。

これはちょっと高めの7.4ユーロだった。

 

 

tkg'07-44.jpg

 

 

半地階のロビーの床にはピラミッドの先端が刺さっている。

 

 

tkg'07-45.jpg

 

 

つまり、ルーブルの中庭にあるオブジェのガラスのピラミッドが

反対側の地下にも伸びているような形になっているのだ。

 

 

tkg'07-46.jpg

 

 

このガラスのピラミッドを囲むように

リシュリュウ翼、シュリー翼、ドゥノン翼と三方の建物がある。

ささと朝食を済ませて、まずリシュリュウ翼から入場した。

 

さあ、Louvreデビューだよっ!

 

 

**********************************

 

    第八章  ルーブルのトイレ事情と最後の晩餐 

 

**********************************

 

お楽しみにっ!

 

 

posted by 小池 紫 at 17:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行記

2010年08月01日

フランス危機一髪! '07 <第六章>

*************************

 

   第六章  悪夢、再び…Toulouse-Paris 

 

*************************

 

快晴の空のもと、Carcassonne駅からTGVは滑り出した。

今回初めて乗ったTEOZ(新車両?)の椅子は

とっても座り心地がよく、これならParisまで車窓を楽しむのも

悪くないのにな〜、と電車好きの銘子は思った。

 

 

tkg'07-20.jpg

 

 

 

そしてつい、♪世界の車窓から♪ を口ずさみながら

写真を撮ってみたりするのだった。

 

 

tkg'07-21.jpg

 

 

 

そんなことをしていたらあっという間に列車は

Toulouse Matabiau駅に到着した。

 

午前11時16分。

 

ともかく、空港バスが出ている場所を尋ねると

駅のすぐそばのバスターミナルから出ているとのこと。

運行スケジュールなどを確認してから駅構内に戻り、

地下鉄で中心街へ向かった。



tkg'07-22.jpg


大阪ニュートラムや神戸ポートライナーと同じ仕様で、

ホームのドアと列車のドアの二重扉になっている。

まずは“キャピトル広場”を目指す。

ここにツーリストインフォメーション(観光案内所)が

あるはずだ。

 

ここでざっと主要な観光ポイントを地図に記してもらって散策だ!

と、思ったらおなかが空いて来た。

そういえばお昼ではないか。

 

銘子はガイドブックに載っていた、

Brasserie FLO Les Beaux Arts に行くことにした。

 

もともと歴史あるレストランだったらしいのだが、

今はFLOグループのチェーンになっているようだ。

レトロな内装の中、お手軽メニューがあるようなので、

その選択をした。

 

広場を南下し、大通りに出たところで西に進むと

すぐに Garonne川にぶつかる。

このPont Neuf (Toulouse 最古の橋)のたもとにその店はある。




tkg'07-23.jpg

 

通されてメニューを見る。

隣のおじさんたちのボリュームある皿を見ていたら、

どうしても前菜とメインの両方を食べきる自信がなかった

銘子は変則的ではあるが、前菜だけを頼むことにした。


 
 


tkg'07-24.jpg


写真で見ると、どう見てもデザートに見えるだろうが、

いやいや、これが。

 

甘くないパイ生地の上に、タルトタタンのように煮たリンゴ

(甘くない)が載り、その上にもちろん甘くない

『フォアグラのアイスクリーム』が載っているのだ。

 

飾りはあさつき。

ソースはチョコレートではなく、バルサミコソース。

 

絶妙のバランスとハーモニー。

 

銘子は大満足で 1/4 Pichet(250ml入りのキャラフ)の

赤ワインをじっくり楽しんだ。

 

店側からしたら、儲からない客だ。

すんません。

 

申し訳ないので(?)いえいえ、

まだおなかに余裕があったので

久しぶりにデザートを頼んでみた。

 

ボリュームのあるものは無理なので、やはりここは

Crème Brûlée(クレーム・ブリュレ)にした。

 

これなら完食できる。

 

それでもやはり多い。直径20cm、深さ1.5cmは確実にある。

 

 

tkg'07-25.jpg

 

 

 

エスプレッソもいただき、ゆっくり食事をして店を出たら

すでに午後2時を回っていた。

何だか風が出ていた。

 

雲行きがおかしい。

 

しばらく歩くとポツポツ雨が降って来た。

バッグに入れてあった折りたたみの傘をさそうとすると、

なぜか骨が折れていた。

縁起でもない。どうして折り畳んだ状態で骨が折れるんだ?

 

雨が降ったり止んだりするなか、暗い空の風景を撮りたいと

思わなかったのでそのまま銘子は地下鉄に乗り、

空港バスの乗り場へ向かった。

 

雨が本降りになっていた。

15時ちょうどのは出てしまっていて、

次の15:20発のバスに乗り込んだ。

空港までは30分だそうだ。

料金は4ユーロ(680円しない)。

タクシーに乗るよりはずいぶん安い。

 

銘子の乗る便は AF6135 で、Toulouse17:15 発だ。

空港には15:50頃に到着した。ちょうどいい時間。

すぐに2階のチェックインカウンターへ向かう。

 

あれ?どうしてこんなに人でごった返しているんだろう?

どうしてこんなにむやみに列があるんだろう?

 

銘子の脳裏に2日前の悪夢がよぎった。

 

「まさか…!」

 

まだ航空会社のストの混乱は続いていたのであった。

とりあえず、列の最後尾の人に尋ねて

そこがパリ行きの列であると確認した。

しばらく銘子はそこに並んでいた。

 

「飛んでいる便に変更してもらったんだし。大丈夫!」

そう自分に云い聞かせながら。

 

しかし…猛烈な焦燥感。

 

最前列はどうなっているんだろう?

そこからは見えない。

 

前にも述べたが、一人旅のときのこういった場合、

誰にも「ちょっと様子見て来るわ!」と

荷物は頼めない(荷物の所有権を放棄するなら別だが)。

そうかといって、列を荷物ごと離れたら最後、

また最後尾につかなくてはならない。

 

そのとき、なぜか銘子はそのまま列に並んでいては

いけない気がした。

 

「ええい!また並び直してもいいや!」

 

やはり、列の最前列はカウンターにつながっていなかった。

ロビーの真ん中に張られたロープがあるだけだった。

 

酸っぱいものが銘子の喉に込み上げて来た。

焦りながらチェックインカウンターを見回すと、

一番左のカウンターに人がいた。

誰かが交渉している。

 

「ここだ!」

 

銘子はその人の真後ろで自分の順番を待った。

また酸っぱいものが込み上げて来る。いかん、いかん。

吐いている場合ではない。

 

自分の番になった。とりあえず、こう聞いてみる。

 

「あの…私の飛行機の予約番号はこれなんですが、

 どのカウンターでチェックイン手続きすれば

 いいですか?」

 

昔の人形劇・サンダーバードの次男に似ているお兄さんが

無表情でコンピューターのキーボードを叩いてすぐに云った。

 

「その便は欠航です」

 

銘子の血の気が引いた。

 

「これは変更した便です!これは飛んでいるということで

 変更したんです!

 なぜ?どういうこと?私は今夜、パリに行きたいの!

 着かなくてはいけないの!

 どうすればいいのぉ〜っ????!!!!!! 」

 

考えるよりも早く、すらすらと叫んでしまった。

たぶん、文法も単語も動詞の活用もおかしかったと思うが、

通じたようだ。

何てったって、勢いが違う。

 

「15:55発の便にもしかしたら席があるかもしれません。

 しかし、今、乗客リストを作っている最中です。

 そこで待っていてください」

 

彼が視線で示した壁際に行くしかなかった。

銘子の後ろに控えていた次の客が

すぐにサンダーバードに覆いかぶさるように話しだした。

 

すでに16時は回っているのに、15:55発の便???

 

どういうこと?

 

自分の聞き間違いか?

しかし、ここで待つように云われたのだから待つしかない。

また酸っぱいものが込み上げて来た。

 

銘子の乗るはずだったTGVはToulouseを13:14に出て、

Parisには19:05に到着するものだった。

もし、もしもあのままTGVに乗っていたら今頃は…

いや、そんな“たら・れば”の話を思っても仕方ない。

 

今から雨の渋滞の中、タクシーを飛ばして駅に向かっても

17時を回る。

そこですぐに発車するTGVがあるかどうか?

なかったら?

満席だったら?

駅で夜明かしをするか、この空港内で朝を迎えるか?

 

究極の選択をしながら辺りを見回して銘子は決めた。

もし、サンダーバードがどうにもしてくれなくても、

空港内にいる方が安全に思えた。駅で寝るよりはマシ!

 

後で考えれば、そこまで悲壮な決意をしなくても、

翌朝の便に変更して、またToulouse 市内のホテルを

とればいいものだが、そのときの銘子には

全くと云って余裕がなかった。

 

ふと気がつくと、先ほどの後ろに並んでいた客が

『つい立て』のごとく、銘子の真ん前に立った。

これではサンダーバードから私が見えなくなってしまう!

 

銘子は否が応でもサンダーバードの視界に入る場所に移って、

必死のアイコンタクトを取るのであった。

 

銘子の熱視線で焦げたのか、サンダーバードが呼んだ。

 

「フライグブルーカードを…」

 

間髪を入れずにカードをカウンターに出す。

 

彼は全く無表情で会員ナンバーを打ち込む。

 

「では、もうしばらくそちらでお待ちください」

 

銘子は涙目で頷いた。

涙でかすんだ目で見上げると

そこには“WaitingList”と標示が出ていた。

 

よく分かっていない銘子だが、

あのまま列に並んだままだったら、埒があかないというか、

どうしようもないことになっていた、

ということだけは分かった。

 

サンダーバードに唾がかかる勢いでイタリアか

スペイン人のおねえさんが文句を云っている。

その後ろに暗い目をしてアフリカ人が3人で

仰天するほどの荷物を持って並んでいる。

段ボール箱にゆる〜く紐をかけただけのものだが、

箱の大きさが半端ではない。そしてそれが

3個、4個、いや、5個。あんなん持って

飛行機って乗れるのか?

 

いやいや、そんな人の心配している場合ではない。

 

銘子の後で銘子と同じようなやり取りをしていた

オネエサンが「そこで待つように」と隣に来た。

 

軽く鼻歌を歌っている。次のオネエサンもそばに来た。

すんごい冷静だ。

銘子と違って、焦っている雰囲気が全くない。

 

気になるので、そのオネエサン達に聞いてみた。

 

「私たち、パリに到着出来るんでしょうかねぇ?」

 

オネエサンは軽く、

「行けるんじゃない?」と云って、また鼻歌を歌いだした。

 

銘子は今、“ものすごく大丈夫”な状態なのか?

確実に乗れるのか?

 

いや、楽観視は出来ない。チケットをもらうまでは。

いや、チェックインをするまでは。

いや、飛行機に乗るまでは。

いや、その飛行機が飛ぶまでは!

い〜や!その飛行機がParisに無事に到着するまでは

誰も何も信じるもんか!!!

 

サンダーバードが顔を上げて銘子に呼びかけた。

 

「マダム !」

 

カウンターに飛んで行った。

チケットが渡される。15:55発のAF7787便のだ。

 

「あちらでチェックインしてください」

 

「ええっ!Parisに帰れるの?」

 

「はい」

 

サンダーバードは眉を動かさずに答える。

 

「ありがとう!ありがとうっつつ!!!」

 

タグをつけられた荷物が、ベルトコンベヤーに揺られて

向こうへ消えていった。

 

「搭乗口はあちらです、マダム」

 

「はい、ありがとうっ!」

 

搭乗手続きの荷物検査でベルトを外せと云われる。

ベルトでも何でも外すわ!帰れるのだったら!

 

搭乗がすでに始まっていた。

すぐに乗り込む。満席だった。

時計を見ると、16:50だった。

空港到着が16時前だったから

かれこれ1時間ほどの出来事だったのだが

銘子にはもっともっと重く長い時間だった。

 

機長のアナウンスが流れた。

 

「当機は18:30、Parisに到着します…」

 

「…ほぼ…予定通りにParisに帰れる…じゃない!!

 何?…いったい、何だったんだ?…この1時間はっ?!」

 

窓際で銘子は一枚写真を撮った。

どうも、目が潤んでいたのか、雨で窓が濡れていたのか、

“涙のToulouse Blagnac空港”とでも名付けようか。

 

 

tkg'07-26.jpg

 

 

Paris CDG空港には定刻通りに到着した。

すっかり土砂降りである。

タラップを降りて空港内へ向かうバスに乗り込むまでにかなり濡れる。

でも構わない。だって、もうここはParisなんだもん!

 

荷物も無事に出て来た。

まだこの時間だったらRERでも大丈夫(な時間帯)なのだが、

もう銘子は疲労困憊だった。

 

で、タクシー乗り場へ向かい、

行き先のホテルの名前&住所を告げて軽く目を閉じた。

 

雨のラッシュアワー。またもや渋滞に巻き込まれながら、

やっとホテルに到着した。

ここで我に返った銘子は、ホテルの3軒向こうの

中華総菜屋さんに寄って夕食代わりのビールを買うことを

忘れなかった。

 

 

tkg'07-27.jpg

 

 

 

預けておいたスーツケースを受け取り、部屋に入った。

 

「帰って来た…帰って来られた…うそじゃない…」

 

声に出して云ってみた。

ビールを一口飲んだ。うそじゃなかった。

 

スーツケースから充電済みの電池を装着し、

携帯からメールで無事に帰って来た旨を桐子と俊に伝えた。

 

俊に変更してもらった便が飛ばなかったことは、

彼らが知っているはずで…きっと心配していると思ったからだ。

 

行き違いにメイルを受信した。

 

このレンタル海外用携帯は

FOMAカードを入れ替えているので

普段使っているメイルアドレスに送られたメイルを

そのまま受信する。

もちろん受信料金は海外ということもあって高くなる。

 

だから選択して受信することも出来るのだが、

今回の渡仏を銘子はほとんどの友人に伝えていたので

特別な操作をしないでいた。

 

いったい、誰だろう???

 

送り主は何と…ノブリン(元カレ)だった。

(以前、メルアドを教えるはめになり、

 それからたまに携帯にメールが届くのだ。

 もちろんこちらから返事はしない)

 

『おはよー! 銘子、映画観に行けへんかー?

 メルアド、新しいこっちに変更しといてー』

 

「誰が行くかい!」

 

銘子は消去しながら、ビールをもう一口飲むのだった。

 

 

つづく

 

 

次回、

 

***************************

 

  第七章   Louvre(ルーブル美術館)デビュー! 

 

***************************

 

をお楽しみに!

 
 
 
posted by 小池 紫 at 15:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行記